就業規則・社内規程の整備
就業規則・社内規程の整備
就業規則は会社のルールを明確にし、従業員との間の無用なトラブルを防ぐための非常に重要なものです。以下のステップに沿って、会社の実態に合った、そして法的に有効な就業規則を作成していきましょう。
就業規則の作成は、大きく分けて以下の7つのステップで進めていきます。
まず、会社の「今」と「これから」を正確に把握することが最も重要です。以下の点について、経営者様や総務担当者様から詳しくお話を伺います。
経営理念・方針: どのような会社を目指しているのか。
労働条件の現状: 始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇、賃金の体系や計算方法など、現在の運用状況。
従業員構成: 正社員、パートタイマー、契約社員などの割合や働き方。
課題とリスク: 現在、労務管理上で困っていることや、将来起こりえそうなトラブル。
将来の展望: 今後、会社として導入したい制度(例:テレワーク、フレックスタイム)など。
ここがポイント: 会社の実情に合わない規則は、いざという時に会社を守ってくれません。
ヒアリング内容を基に、就業規則に盛り込むべき項目を整理し、全体の構成(骨子)を決めます。就業規則の記載事項は、法律で定められた以下の3つに分類されます。
絶対的必要記載事項: 必ず記載しなければならない事項。(例:労働時間、賃金、退職に関すること)
相対的必要記載事項: 会社で制度として定める場合に、必ず記載しなければならない事項。(例:退職手当、賞与、安全衛生に関すること)
任意的記載事項: 法律上の義務はないが、会社のルールとして明確にするために記載する事項。(例:服務規律の具体例、副業・兼業のルール、ハラスメント防止規定)
これらの事項を整理し、章立てをしながら全体の構成案を作成します。
骨子に沿って、具体的な条文を作成していきます。この工程が専門家としての腕の見せ所です。
法改正への対応: 最新の労働関係法令(労働基準法、育児・介護休業法など)に準拠しているかを確認します。
リスクヘッジ: 将来起こりうる労務トラブルを想定し、会社を守るための条項を盛り込みます。(例:問題社員への対応、情報漏洩の禁止など)
分かりやすい表現: 法律用語を多用せず、従業員の誰もが理解できる平易な言葉で作成することを心がけます。
作成した就業規則のドラフト(たたき台)を基に、経営者様と内容をすり合わせます。
ドラフトの内容が、ステップ1でヒアリングした会社の意向や実態と合っているか。
実際に運用する上で、無理がないか、分かりにくい点はないか。
修正や追加のご要望を伺いながら、内容を練り上げていきます。
完成した就業規則(案)は、労働者の代表から意見を聴くことが法律で義務付けられています。
意見を聴く相手:
労働者の過半数で組織する労働組合がある場合 ⇒ その労働組合
ない場合 ⇒ 労働者の過半数を代表する代表者(投票や挙手などで民主的に選出)
手続き: 就業規則(案)を提示し、「意見書」に意見を記入してもらいます。たとえ反対意見が出たとしても、就業規則の効力に影響はありませんが、その意見を真摯に受け止め、必要に応じて内容を再検討することが望ましいです。
常時10人以上の従業員を使用する事業場では、作成した就業規則を所轄の労働基準監督署へ届け出る義務があります。
提出書類:
就業規則(変更)届
労働者代表の意見書
就業規則の本文
これらを2部ずつ用意し(1部は会社の控えとして返却されます)、提出します。
就業規則は、労働基準監督署に届け出ただけでは効力が発生しません。従業員に周知して初めて、法的な効力が生じます。 これは非常に重要な手続きです。
周知の具体例:
各従業員へ書面で交付する。
事業所の見やすい場所(休憩室など)に掲示、または備え付ける。
社内LANや共有フォルダなど、従業員がいつでも閲覧できる状態にしておく。
可能であれば説明会などを開催して内容を丁寧に説明すると、従業員の理解が深まりより効果的です。